『弱虫ペダル』37巻と同時発売されたサイドストーリー『弱虫ペダル SPARE BIKE』1巻。
内容は(坂道達が1年生時点での)3年生キャラクターに焦点を当てた過去編ショートストーリー群で、本編よりも若干コメディ色の強さも感じられますが、彼らの自転車人生に大きく影響を与えた場面が多数描かれる重要な外伝でもあります。
スタート当初は週刊少年チャンピオン誌上に本編と同時連載として掲載されており、短期集中連載のような形でひとつのエピソードごとに掲載時期が区切られていましたが、現在では別冊少年チャンピオンに場所を移して月刊連載として掲載されています。(なので、レーベルも別チャンコミックス扱いで背表紙にも「BESSATSU」の文字が入っていますね)
つまり現在渡辺航先生は週刊連載1本+月刊連載2本を抱えられているというわけで…。ファンとしてはこれだけの作品が読めて幸せですが本当にその仕事量にはひたすら頭の下がる思いです。


1巻の収録エピソードは「巻島裕介1~4」「新開隼人1~2」「東堂尽八1~4」。
アニメDVD特典の荒北さん編はさすがに今回は収録されていませんが、いつかは収録されるのでしょうか。
『弱虫ペダル』本編中でもレース中に回想シーンは多く描かれていましたが、現在進行形で描かれる坂道たちの物語に比べて3年生キャラクターのエピソードは描かれる機会がやはり格段に少ないです。そして、インターハイが終わって卒業してしまったら坂道たち主人公世代とは共には走れない。
そのジレンマを解決するのがこの『SPARE BIKE』という作品なのかなと思います。キャラクター人気がここまで高まるとは予想していませんでしたが…。
キャラクター人気…という点はひとまず置いておいても、読んでいると一人一人の魅力…そして人間味という部分で本編だけでは描き切れなかった部分がずいぶんとあるのだなと実感できます。
また、その個性は立場・立ち位置が変わるとかなり違って見えてくるのだなとも。
巻島さんは主人公である坂道が尊敬し、憧れている存在ですが基本的には変わり者で、周囲とはズレている部分がある。
それは本編中でも見えていた部分ではありますが、一年生として入部したばかりの頃は周囲には理解されず、なかなか自分の個性を押し通せずにいた。その姿を当時の部長である寒咲先輩がひそかに見守り、背中を押していた…。
その事実が掘り下げられているのはこの『SPARE BIKE』ならではかと思います。
巻島さんという人自身は昔からあまり変わってはいない、という感じですがその受け止め方こそ人それぞれで。
そのアクの強さを矯正しようとした当時の先輩たちもいれば、それを伸ばしてやろうとした寒咲部長もいた。
そして現在には、その話を聞いて「カッコイイ」と目を輝かせる坂道もいるわけですし。
”自転車に全てをかけた男たちの記憶の物語”と銘打たれたサイドストーリーですが、人との出逢いにも重きを置いた物語だと思えますね。


東堂に自転車を勧めた当時の友人の”修作”などこちらが初出のキャラクターもいて、それもまたその後が気になるキャラクターだったりして。
広がれば広がる程にさらに知りたくなってしまうペダルキャラの魅力満載です。
元々本編で垣間見られた部分もあれば意外な一面もあったりで。
これからも続いていくと思われるこのシリーズですが、個人的に読んでみたいのは金城さんかな。
巻島さん編でも登場していますが、1年生の頃の金城さんって結構口調が軽いというか年相応感あるんですよね。3年生になってああもキャプテンシーを発揮し、堂々とした口調になるまでにどういった変化あったのか、気になる…。
また田所さんが入学直後はかなり金城さんをライバル視していたようで、その辺のエピソードも見てみたいですね~。
そもそもどっちかというと箱学のエピソードの方が多く描かれているので…そろそろ総北サイドのほうも観たいな。次のアニメDVD特典は巻島さん編のようですが…。
キャラ「萌え」でなくとも、『弱虫ペダル』が好きで、それぞれのキャラクターに面白さを感じている方であれば是非読んでいただきたい作品です。

週刊連載開始時に書いた記事
【わたるは死なない】もう一つの『弱虫ペダル』…『SPARE BIKE』本編とW連載開始!