すっかり2015年ですが、ようやく2014年に読んだ漫画の10選についてまとめました。
順位は付け難いので、10作品選んだだけです。



『クジラの子らは砂上に歌う』梅田阿比(秋田書店)
新連載開始の号の本誌を購入して第一話を読んだとき、その設定や世界観の凝縮ぶりにクラクラして「これはすごいことが始まるのかもしれない」と思ったのです。
その予想を裏切らない、いやそれどころか期待を遥かに凌駕するようなおもしろさ。
阿比先生が紆余曲折を経てたどりついたミステリーボニータというフィールドは、その才能をこれまで以上に遺憾なく発揮できる最高の場所だったのではないかと思っております。
悲痛な場面も多い作品なのですが、それらの描写を決して避ける事なくまっすぐに描ききった上で、読み手が受ける衝撃を包み込むような不思議な優しさが共存しているのは阿比先生の人柄ゆえでしょうか。はんなり。


『アンの世界地図~It's a small world~』吟鳥子(秋田書店)
決して幸せではなかった生い立ちの少女と、古民家でひとり暮らしの少女の運命的な出逢い。
時間の長さよりも深い絆で結ばれていく、ふたりの煌めく田舎暮らしの毎日。
生きることは戦いだし、だからこそキラキラしているのだし、戦うのには好きなものの力が大事だよね!って思える作品です。素敵。
この作品もまた、ミステリーボニータという雑誌の多様性に感謝したくなる作品であります。『クジラの子』と同じ号で『アンの世界地図』が始まったというのは自分にとって大きかったな。


『ぷらせぼくらぶ』奥田亜紀子(小学館)
ちんちくりんな女子中学生「岡ちゃん」を中心としたちょっとハミ出した人たちの日々を描く連作集。なんですが。
不美人でヒネクレた岡ちゃんの姿がコミカルなのに切なくて。ホントもう、グッサグサ胸に突き刺さる作品です。
到底理解できないような「大人」の顔になっていく周りの子たちを(頼みもしないのに)特等席で見せられる岡ちゃんの苦しさったらないよ。思い当たる感情ばかりでこっちまで苦しい。
『空が灰色だから』とか好きな人にも読んでみてほしい作品です。


『のうけん』長田亜弓(小学館)
IKKIはすみずみまで読んでいたわけではなかった、けれど前述の『ぷらせぼくらぶ』といい、この『のうけん』といいIKKI発の新人さんが生み出す作品の極個人的ヒット率は異常に高かった。なので休刊は本当に残念です。
さておき、この『のうけん』は読んでいてテンポがよく面白いコメディ作品であるだけでなく主人公のちあきを中心とした人々、ひいては学校・街までもがいとおしいと感じられる作品でした。
ちあきはちょっとした超能力を持っていて、正義感が強くて、理想が高くてちょっとメンドくさいけど単純でチョロくてめっちゃ良い子なんです。
なんやかんやでいなしながらも、周りのみんながちあきのことちゃんと愛しているところもあって良いんだなあ。


『花もて語れ』片山ユキヲ(小学館)
『花もて語れ」はたぶん1巻が出たときも挙げたと思うんですが、完結前の盛り上がりがさらにすさまじかったんです。
読み手の人生を重ねた朗読を表現した画のすごみは、もはや異能バトルの域にまで達していました。
おそらく、ひとコマひとコマを切り抜いて見ても何が起きているのかわからない程だったと思います。その濃度に脳みそをかき回されるような混乱が気持ち良かった…。
その半面、登場人物たちのドラマの部分に戻ると、難しいテーマもありながらキャラクターたちに寄り添って描ききってくれたなあと。
最後まで熱量の高い作品でした。


『バーサスアース』一智和智・渡辺義彦(秋田書店)
ずっとチャンピオンや秋田書店の雑誌を読んでいると、どこか打ち切りとか単行本が出ないことに慣れてきてしまっている自分を感じる時もあるわけで。
そんな中、2014年で最も「何故?」という気持ちになったのは『バーサスアース』の打ち切りでした。納得がいきませんでした。
現在では、原作の一智先生が自ら描く続篇『ウォーハンマー』がピクシブで読める幸せもあるのですが、『バーサスアース』という作品はやはりここで確かに一度終わっているわけです。
その悔しさとか、悲しさとかも含めて自分の中での『バーサスアース』への愛情だと思うのでここで選出させていただきました。
パニックホラーにカテゴライズされがちだったのがどちらかといえば不運だったのかも。主人公が戦って成長する、実に王道な少年漫画ですよ。


『四月八日のまえがきに』松井信介(小学館)
これはもう、完全に表紙に惹かれて購入しました。
1巻完結のストーリー漫画が好きなのですが、まさに理想形の作品に出逢えたと思っています。
「運命」からはみ出して世界に忘れられたヒロイン・由佳が、自分が住む世界を取戻し、出逢うはずだった運命の相手ときちんと出逢うためにがんばるお話。
なんですが、たまたま一緒に取り残されてしまった赤の他人の青年・滝川(当然彼は彼女にとっての運命の相手でもなんでもない)がさっき出逢ったばっかりの由佳のために共闘するというのがね、良いんですよ。人って捨てたもんじゃないな、って。
最後のページが最高に良かったんです。希望に満ち溢れた、さわやかなラストシーンでした。


『アイアンナイト』屋宜知宏(集英社)
これはもう、完全に表紙に惹かれて購入し…た時にはすでに連載が終わっていたことを知って愕然としました。
ふだん、自分が好きな作品が売れていないことを「マイナーだから…掲載誌が知られていないから…」と無理矢理納得させていたふしがあるのですが、ジャンプだもんなあ~…ジャンプでもだめなのかよ…。
鋭い視点で人間の弱さと強さを描いた良い作品だと思います。そして、熱い少年漫画。絵柄もストーリーも大好き。


『ヤコとポコ』水沢悦子(秋田書店)
まちがいなく2014年に出逢った漫画のベスト1。
「てきとう」だけどけっこういっしょうけんめいな毎日。
発展性はあまりなくても発見は日常にあふれてるのだ。
世界観も不思議でカワイくてコマのすみずみまで愛おしい作品です
色と思い出、毎日は宝捜し。 『ヤコとポコ』1巻(水沢悦子)


『まじもじるるも 放課後の魔法中学生』渡辺航(講談社)
『まじもじるるも』がテレビアニメになるなんて夢のような日々。この作品はそれに合わせた連載だということが明らかにもなりましたが、一度完結した『まじもじるるも』の世界から繋がりながらも新たな作品を作り上げんとする渡辺先生の気概も感じられます。
アニメ放送中はるるもメインのエピソードが中心でしたが、あくまでこの『放課後の魔法中学生』の主人公はルシカ・スラガ・モモヒメの3人の魔女たち。
どこか不完全だからこそ応援したくなる主人公…という部分はるるもから引き継ぎつつも、三人三様の性格で巻き起こる事件も様々で。笑いもあって、涙もあって、恋もあって…。
やっぱり、わたしは渡辺航先生の描く女の子が好き!!とあらためて実感しました。『まほちゅ』が読めて幸せです。
ハッピーな魔女たちの日常あふれる最新作! 『まじもじるるも 放課後の魔法中学生』1巻(渡辺航)
やっぱり「あの男」がいないと始まらない! 『まじもじるるも 放課後の魔法中学生』2巻(渡辺航)
渡辺航先生『まじもじるるも』アニメ化までの奇跡の軌跡



以上です。
やっぱり秋田書店が多いと思ったら小学館も多い…たまたまだとは思います。
こうやって挙げていくとほんとに好きな作品ばかりなのにこのブログで言及するのが初めてという作品が多くてなんというかほんとふがいなさをかんじています…。
すきなものの話はもっとちゃんとしていかないとな!
いまはとにかくミステリーボニータにかなり夢中になっているので今後ブログでも推していきたいと思いますわっしょいわっしょい!!