2013年、別冊少年チャンピオン誌上に読切として掲載されてから約1年という時を経て目出度く本連載に昇格した、
原作・猪原賽先生&作画・横島一先生による『ガンロック』。ついに単行本1巻が発売されました。
別冊少年チャンピオンが2012年6月に創刊されて以来、チャンピオン連載経験作家や新人作家の作品を中心に幾つもの読切作品が掲載されてきましたが、別チャンオリジナルの読切作品が連載に昇格したケースはこの『ガンロック』が初めてだったはずです。それだけに、まさにこの作品は「読者が望んだ作品」だと言えると思います。


[星刻(コア)]と呼ばれる次世代エネルギーによる動力源が普及した世界。星刻、それは夢のようなクリーンエネルギー…しかし、星刻が世界的に普及するまでには星刻陣営と化石燃料陣営との世界規模紛争…[世界動力大戦]があり、その戦争によって生まれた犠牲は数多く、根深いものでした。そして現在、平和になったはずの倫敦の街にも大戦が生んだ歪みが幾つも存在して…。体内に星刻を持つ[星刻兵(コアソルジャー)]として戦地に立たされていた改造兵士たちは、体内の星刻もそのままに記憶と国籍を消されただけで世間にただ放逐されていたのです。


さまざまな出来事がガンロック…引き金となり、星刻兵としての記憶が呼び覚まされた人間たちが引き起こす事件を解決すべく登場するのがポール・シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトソンのコンビ。彼ら自身もまた大戦によって背負った悲劇的な過去を持ちながらも、普段は悲観的な様子を殆ど見せないという点が大きなポイント。あくまで軽薄なポールことホームズと、あくまで大真面目なジョンことワトソン。噛み合っているようないないような2人の掛け合いが実に絶妙なお陰で、この物語が本来持っている哀しい部分を補って余りある爽快さが生まれています。
特に、作中で最も深い闇を抱えていると言えるポール(ホームズ)が飄々としたキャラクターなのが大きい!過去も何もかも受け入れた上でいま在る自分を素直に生きているから清々しいのです。ポールがこういう性格なのは元からなのか、それとも色々な事があった上で辿り着いた境地なのか。彼自身の過去も徐々に作中で明らかになりつつあって興味深いところです。
gunlock


公式的には「異端のホームズ」であるところを一番の推しどころにしているように感じられますが、逆にこのウリ方では「ホームズ」に反応しない層にアピールしきれないのではないかと少々心配しております。というわけでホームズ知らない層としてもただ純粋に『ガンロック』が面白い作品であることを主張していきたいところですね!原作の猪原先生が公開されたPVもあるので貼っておきます。”次世代ホームズ”的な一言では言い表せっこないおもしろの要素の凝縮を感じていただきたいです。