『弱虫ペダル』40巻が発売されました!ついに40巻!すごい数字です。表紙は御堂筋君。40巻に相応しいインパクトでございます。
40巻を祝して?か、帯の幅がいつもより広いですね…。そして、講談社漫画賞受賞おめでたいです。渡辺先生には講談社で連載している作品があるのに、秋田書店で連載しているほうの作品が受賞というのに複雑な部分もありますが…。


さて、IH1日目もいよいよ終盤。総北の今泉&鳴子VS箱学の黒田&葦木場の熾烈なトップ争い…そこに迫る不穏なプレッシャー。そう、今年も虎視眈々とゴール”のみ”を狙い、総北・箱学の後続を振り切って先頭に近づいてきたのは京都伏見の御堂筋。ただし、彼一人ではなく今年は謎多き一年生・岸神小鞠と共に、です。
良い筋肉(ニク)に異常な執着を見せる岸神という男は、このインターハイレースそのものよりも先頭集団の選手たちの筋肉にしか興味が無いようで…。何故彼がここまで筋肉に執着しているのか、何故あの御堂筋が彼のことを一目置き、(ある意味で)信頼を寄せるようになったのか、まだまだ明かされていない部分は多いです。が、ただ一つ言えるのは、その混じりけのない執着に対し、御堂筋が自身の「ゴール」「勝利」への純粋な拘りに近いものを感じているのかもしれない…とは思います。このIHのレースの真っ最中において、良いニクのことしか考えていないというのはある意味では物凄い純粋さですからね…。その想いだけで頭をいっぱいにして、御堂筋と共に先頭集団へ辿り着いてしまうんですから相当なものです。また、そんな岸神を「がまんのできん男やわ」と御堂筋が評していますが、これには昨年のIHで御堂筋を引いた”がまんの男”こと石垣さんとの対比を感じました。彼らの関係や岸神くんの素性については今後描かれていくのでしょう。
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しかしこのIHのゴール争いのさなかで、「勝利すること」をまったく考えていない男の存在の不気味さは何よりもその場を混乱させます。それは京都伏見の作戦の通りで、場がかき乱されて意識がそちらに集中している隙に御堂筋は単独トップに躍り出ます。しかし、ただ一人混乱に動じず食らい付く男が。鳴子章吉、総北の熱く赤い男。彼は冬の大阪で偶然御堂筋に出逢い、勝負をし、敗北していました。その敗北によりスプリンターの称号を捨て、オールラウンダーに転身。そんな彼にとってはこの場での御堂筋との再戦は願ってもないチャンス。総北のゼッケンを背負った勝負でもありますが、今度こそ御堂筋に勝利し、スプリンターの称号を取り戻すための彼自身の闘いでもあります。
御堂筋VS鳴子の勝負はその走りも去ることながら舌戦も激しいこと激しいこと。関西出身者同士ということもあるのでしょうか…どちらも一歩も引かない、屈しない。そのやりとりもこの巻の見どころのひとつかと思います。


飛び出した2人に引き離されつつも、今泉そして箱学の黒田・葦木場も直ぐに体勢を立て直します。先頭に追い付くために今泉は箱学との共闘を選択。黒田にはエースを送り出す「アシスト」を貫く覚悟があり、自身に”スイッチ”を入れるためのとある行動に出ます。気持ちを上げ、加速する黒田の姿にエース・葦木場も同調し徐々に彼らも先頭へと近づきます。以前は「最強の洗濯係」だった葦木場は、かつての主将・福富らに導かれ箱根学園のエースにまで成長。尊敬と感謝、さまざまな思いを抱きながら福富から受け継いだ「オレは強い」という言葉を発する葦木場の姿は胸に迫るものがあります。この言葉には口にすることで…自分に言い聞かせることで、自分自身を奮い立たせる力があったのですね。箱学の力はこうして受け継がれていくのだなと感じた瞬間でした。


緊迫した頂点争いの中ですが、個人的にはゴール付近で待機する1年生たちの姿も印象深いです。杉元弟こと定時に大きな声での「応援」を託す古賀先輩。レースに出ている選手たち以外にも、経験の浅い彼らにも、出来ることがある。そんなひとコマに、少し勇気づけられる場面でもありました。


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