週チャン期待の新星・鈍速毎日先生の初連載作品『マジカロマジカル』の第1巻が発売されました!
鈍速毎日先生(鈍足、ではないので注意)は2012年に読切初掲載以来、5回(!)の読切掲載を経て、2015年より今作品で初の連載を開始。たいていは新人作家さんは本連載前に短期集中連載で様子を見るケースが多いので、これだけの回数の単発読切を重ねてから連載というのはなかなか珍しい流れだったと思います。


表紙からして明るく可愛い魔法少女モノに見えますが、その世界観はなかなかに終末感が漂っています。
ある日を境に人間を含む数多くの生物たちが”怪物化”する地球外来ウィルスが都市部を中心に広まり、ヒトであったはずの怪物がヒトを襲う凄惨な光景に街が覆い尽くされていました。
そんな中で主人公である小泉雫(こいずみシズク)は幼くして両親を失い、独りで逃げるしかなかったときに”魔法使い”と呼ばれる能力の持ち主に救われて人生観を一変させられていた少女。
”魔法使い”とは、「対・外来ウィルス感染生物能力保持者」の通称で、ウィルス感染した怪物が出現し始めた頃に能力を開花させ始めた人々のこと。雫は自分を助け出してくれた魔法使いに憧れ、自分もこうなりたいと願い本当に”魔法使い”としての能力を開花させたはずだったのですが、実際は軽度の治癒能力しか無く、憧れとは程遠い”魔法使い”として苦悩の毎日で…。


第1話ではそんな雫こと通称”リバー・ブルー”が魔法使いとしてとある特殊なチカラを持っていることが明らかになるのですが、基本的には普段は苦労人で若干ポンコツ気味であることには変わりなく。同じくおちこぼれ魔法使いの”アサヤケ・レッド”こと日向朝(ひむかいアサ)や”モス・グリーン”こと沙原簓(さはらササラ)とチームを組んだり、もう一人の主人公とも呼べる半・怪物化人間の狼一をパートナーとして共に生活することになったりとドタバタの日々を送ります。


廃墟のような街並みが広がり、多くの人々が被害の大きい都市部からは離れてしまった中で、それでも健気に”魔法使い”として闘う道を選んだ雫たち。そしてこの街で生きることを選んだ人々。雫が自分を救ってくれた魔法使いから大きな希望を貰ったように、彼女も半人前ながらその信念をもって人々に光を与えていく。そしてまた、人々の言葉や生きるチカラに雫も救われる。その連鎖には、ホントは魔法使いかどうかなんて関係ないのかもしれません。危険がいつ迫ってくるかもわからない中で彼らがこの街で暮らしていく理由に明確な答えなんてないけれど、不安や危険に苛まれながらもここで生きることに決して意味がないわけではないのです。
magi


正直な印象を言うと、そうしたことを描いていくのに未だ作品として不安定さを感じる部分はありますし、方向性やコメディパート/シリアスパートのバランスがとれていないこともあると思えます。が、それでも信じて見守って行きたいと感じさせるものがあるのは、おそらく雫が未熟ながらも強い心と笑顔で闘っているようにこの『マジカロマジカル』という漫画の根底にあるメインテーマ自体にはブレがないからかな、と私は思っています。
…それと、単純に惹かれる理由のひとつとして絵の良さがあります。強弱のついたペンタッチが好みな自分としてはとてもツボな絵柄で。人々の表情を描くのにも、ちょっとしたお色気を挟むにも、やっぱり絵のチカラは大きいです。


そんなわけで、今後が非常に楽しみな作品であります。ウィルスの事も、魔法使いの事も何かと謎が多いままですしそういった部分が徐々にでも明かされていくといいな。週チャン生え抜きの新人さんの初連載作にしては単行本の初速も悪くなさそうですし!期待しています。