この漫画が売れないようならチャンピオンは結構ヤバいと思う。
いきなりただの本心ですみません。チャンピオン民・秋田書店ファンをやっていると「この漫画、面白いのにどうして売れないの?!」という歯がゆい気持ちを抱くことはままあるのですが、普段からそんな環境に置かれながらも”これが売れなきゃホントにヤバイ”と思えるくらい面白い、『吸血鬼すぐ死ぬ』の第1巻が発売になりました。
吸血鬼ハンターのロナルドが依頼を受けて向かったとある吸血鬼の根城。”真祖にして無敵”と噂される城の主・吸血鬼のドラルクは…ドアで挟んだら即死するくらい最ザコな吸血鬼だった!~完~
…ではなく、即死してもすぐ復活はするもののちょっとしたアレでまた即死のくりかえし。そんな虚弱な吸血鬼がてんやわんやしているうちに城を失ってロナルドの吸血鬼退治事務所(新横浜)に転がり込んで居候するようになっちゃって、というハイテンション即死ギャグです。
タイトルにウソ偽りなし、本当にドラルクさんはすぐ死ぬ。よく死ぬ。とはいえその即死設定だけでは出オチ感は否めないのではないかと思われるかもしれませんが…次々登場する吸血鬼・吸血鬼ハンター・その他の人々のキャラが立ちまくりなうえ掛け合いがとことんテンポ良くて、ぐんぐん読ませてきます。面白たのしくハイテンポで読んでいるといいタイミングでドラルクさんが死にます。それがまったく、回を重ねるごとに効果的に死んでくれるんですよ。効果的な死ってなんだろう。文字にすると謎ですが、読めばわかるハズ。「ここだ!」ってところで死ぬので。出オチみたいな設定を飽きさせないどころか、その使いどころをモノにしていくのだから盆ノ木先生すごいです。

ギャグ漫画のどこどこが面白い、というのを言葉で説明すると野暮にしかならないかもしれませんが個人的に『吸血鬼すぐ死ぬ』の”ここが好き!”と思ういくつか部分を挙げてみます。
先ずは会話のセンス。どいつもこいつも個性的すぎて完全にツッコミに回れるタイプの冷静な常識人というのが皆無なキャラクター陣ですが、逆に誰と誰が喋ってもかっちりハマるんです。全員が突拍子もなくってほぼ全員が即座に対応できるから、ただ会話が進んでいるだけでも漫画としての密度が濃ゆい濃ゆい。


次にキャラ立ち。単にメインのキャラが立っている、というだけでなくモブのように登場したキャラがコマの隅っこで何やら動いてたり、さらにはのちのち再登場して…ということがうまく周るのは設定的なことがどうこうという問題よりも、どんなキャラにも盆ノ木先生が等しく生命を吹き込んでいるからに他ならないと思います。
そしてとっても重要なのが…なんだかワーワーやりながらもみんな仲が良い!ってところです。吸血鬼⇔ハンターという天敵同士が同居してドタバタ喧嘩しているのが中心ということもありますが、老若男女がなんかおんなじベクトルでバカやっているんですよね。これって実はものすごく楽しくて、ものすごく幸せなことのように思えます。みんないちおうちゃんと仕事とか持ってる人たちなのにさ。この平和さが、いい年してもふざけてたい願望を持った大人にも絶妙に刺さります。
これまでの「面白いのに売れずに終わってしまった」漫画たちも心の底から素晴らしい作品がいっぱいあったと思っていますしどれが劣るとか勝るということを言いたいわけではないです。でも…まったく言い方に気を遣わずに言うと、この漫画には絶対に売れて欲しいなあ。というのが率直な気持ちですよ。『吸血鬼すぐ死ぬ』に対して謎の”手応え”みたいなものを感じているチャンピオン読者は少なくないハズ。
とにもかくにも、未読の方は試し読みをどうぞ!http://arc.akitashoten.co.jp/comics/sugushinu/1 なんと3話まで読めちゃう。アルマジロのジョンがミラクルかわいい!