発売からだいぶ間があいてしまいましたが…『まじもじるるも 放課後の魔法中学生』第5巻の感想です。(これから少しずつ単行本感想の更新を再開していきたいとおもっております…。)


小さくなった身体で、2年前の過去に飛ばされたままのルシカ・スラガ・モモヒメの3人。ハルリリの協力のお陰でスラガ、モモヒメの”言ノ葉の書”は見つけることができたものの、依然ルシカの”言ノ葉の書”の行方はわからないまま。そして、一緒に過去にやってきたルシカの使い魔・JJの意識も戻らないまま…。
(主にルシカのマイペースさのせいで)緊張感には欠けるものの、やはりこのままとはいかない過去世界での日々。そんな中、ルシカたちの耳にとある情報が飛び込んできます。


FHK不思議発見クラブの部長こと先輩が耕太の家に乗り込んできて告げた、街のあちこちでハート型に折れ曲がった道路標識や電柱が発見されているという事件。先輩の話で街中で不用意に魔法が使われている可能性があると知り、るるもと耕太はその原因を探りに街へ飛び出します。そしてその会話を聞きつけて”言ノ葉の書”が使われているのではないかと察知したスラガ&モモヒメ、そして完全に己の感覚頼りのルシカ、3人の魔女たちもるるも達を追って街へと向かいます。


街で起きている不可解な現象は、”言ノ葉の書”を拾ったひとりの小学生・清河桃果の手によるものでした。
”言ノ葉の書”にはJJの魂が宿り、意識を持った魔法書と化した状態。記憶を失ったJJは紅色の書にちなんでベニーと名付けられ、モモカを主と思いこみ、モモカが命じる通り苛めっ子の家の前の電柱をハート型に折り曲げるなど魔法の力でやりたい放題していたのでした。
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街に出たるるもは魔法反応を察知していち早くモモカが持つ”言ノ葉の書”に気が付きますが、この時代のるるもにとって未来で造られた魔法のシステムである呪文字、そしてそれを集めるための”言ノ葉の書”はまったく未知の存在。また、本来ならば魔女のきまりで恨みごとのために使ってはいけないはずの魔法の力を使って憂さを晴らしていたモモカは徐々に魔力に心を侵食されはじめており、強い警戒心をもってるるもと耕太に魔法攻撃を仕掛け始めます。


完全に魔力に侵食されてしまえば、魔界のきまりでモモカは「処分」の対象となってしまう。それを知っているるるもはなんとかモモカと”言ノ葉の書”を切り離そうとするものの、魔力に人格が侵食されつつあるモモカは想像以上の力で魔法を使いこなし、るるもと耕太はかなりの危機的状況に追い込まれます。
そこに現れたのはルシカの手なずけた(?)ノラ犬に乗ってやってきたルシカ・スラガ・モモヒメ一行。ルシカの”言ノ葉の書”を取り戻すべく、今度は彼女たちがモモカの暴走を食い止めようとするのですが…。


この第3シリーズ『魔法中学生』編では初となる緊迫の魔法バトル展開。『魔界編』での魂晶のカベでの魔法バトルが大好きだった私としては待ってました!な展開です。ただ今回は人間の女の子の安否が関わってきていますし、るるもの身にも予想外の危機が迫ります。身体的なピンチもそうなのですが、徐々に魔力に心を捕らえられつつあるモモカの姿がるるもの過去の忌まわしい記憶を呼び覚ます描写もあり、それもまたつらいものがあります。(やや余談ではありますが、るるもってこの作品の中の闇の部分を実は独りで背負っている部分が割とあると思うのですよ。それを普段知っているのはチロかハルリリくらいのもので。ただ、それを深刻化させないるるもにとっての”救い”は何も知らないはずの耕太の明るさとか気の回し方だったりすると思うので、絶妙なバランスだしほんとにお似合いの二人だと思います)
…ただし、そんな展開に似つかわしくない?可愛らしい表紙なんですよね、今回。るるもの頭に乗ったブタは読む前では「???」となると思いますが…理由はきちんとあるのです。生死に関わるレベルの緊張感ある魔法バトルの中に、こうしたほっこりポイントを仕掛けてくるあたりが…本っ当に渡辺先生のうまさだと思います。大好きですね。大好きすぎる。
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一方でルシカ一行。久し振りにスラガさんのカッコいい剣技が披露されているのはこの巻の見どころの一つだと思いますよ!普段の生活ではやや抜けている部分もあるけれどいざ「作戦」に向かうとなると本当に頼りになる存在です。剣技と作戦遂行力のスラガ、冷静さと知的さのモモヒメ、そしてウルトラポジティブで直感的なルシカ。良い組み合わせです。
ルシカの”言ノ葉の書”は、記憶を失ったJJは、そしてモモカの命運は…。すべての結末は次巻に!(自分は連載分ですでに読んでいますが…っ)


それにしても『放課後の魔法中学生』シリーズは最初は明るく楽しくときどき胸キュンなコメディとして始まったかと思っていたら、過去に描ききれなかったようなるるも達のエピソードの補完にホロリと泣かせる人情話に緊張感あるバトルにと巻数を重ねるごとにまったく違った味を出してくる脅威のシリーズとなりつつあります。ひとつやふたつのジャンルでは縛られないし、本当に渡辺先生が好きに描いていらっしゃるのかなあと嬉しくなります。あとがきで「るるもシリーズ最長に可能性がでてきた」と書かれていますが、テレビアニメの販促に近い形で始まったこのプロジェクトが益々続いて長く楽しめたらそんなに嬉しい事はありません。