「勇者」と「魔王」がいる世界、そしてその間には…「勇者サポート業」がいる!
週刊少年チャンピオンでのデビューから別冊少年チャンピオン、そしてミステリーボニータとさまざまな雑誌で作品を発表してきた木佐貫卓先生(旧名「れいか先生)の初連載作品、『マル勇 九ノ島さん』の単行本第1巻が発売されました。ボニータもハマっていましたが週チャンへのご帰還、そして連載はとっても嬉しいです。


舞台となるのは大樹のような型をした通称「ユグドラシル」と呼ばれる宇宙。枝分かれをした先に一つ一つの独立した世界が存在し、それらの世界には必ず「勇者」と「魔王」が存在している。もしも魔王が世界を滅ぼしたならば、その世界からユグドラシルは腐りおちていってしまう。世界の崩壊を、そしてユグドラシルの腐敗を防ぐためには勇者が魔王を倒さなければならない。その勇者を”サポート”するための企業「H・S・C」がこの物語の主人公たちの勤務先です。


幼い頃に出逢った勇者から貰った「自分の正義を裏切らないこと」という言葉を胸に信じる道を突き進んできた天人類(=いわゆる「天使」!)のフィオ。
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H・S・Cへの就職が決まり夢と希望に満ち溢れる彼女はちょっぴりおめでたいお花畑的な性格をしつつも「勇者」へのあこがれは人一倍強く、やる気も十二分!そんな彼女が配属された営業3課で待っていたのはイケメンだけどとんでもなく人を食ったような態度のセクハラメガネ「九ノ島竜一」課長と同期入社でドがつくほど真面目なフィオと同じ天人類の娘「ヴァル=フレイヤ」。性格も何もかもバラバラな3人が挑む仕事は、勇者と共に戦う…というような華のあるものではなく、戦えなくなった勇者をサポートするというもので…?!


フィオたち3課が向かう先々の世界で出逢う勇者たちは予想以上にひとクセもふたクセもあって、1巻に出てくる限りでもギャンブルに没頭したり課金ゲームにのめりこんだり…と勇者以前に問題があるような面々ばかり。とはいえそれぞれ理由はきちんとあるのですが…はたから見たらほんと~にダメ人間にしか見えないのですよね。これは困った。
勇者がどれだけ堕落していても世界を救えるのは…魔王と戦えるのは勇者のみという困った世界の摂理。だからこそ「マル勇」が存在しているわけなのです。勇者は選ばれし者、それはおそらく自分で決められるようなことではなく。そして周りには世界のすべてを勇者に託すことしかできない。無責任ともいえる摂理に選ばれてしまった勇者はそれでも世界を救おうとするけれど、勇者である以前に一人の「人間」である彼らの心を見抜き、寄り添えるような存在だって必要です。勇者という孤高を支えるにはそれなりの覚悟も立場も必要で、そのために仕事としての「マル勇」が存在してるのではないのかなと感じます。


もしかしたら勇者と戦いを共にするよりも難しいのでは?と感じられる3課の仕事にフィオとフレイヤが選ばれた…九ノ島課長が選んだ理由。それは入社当日の最終試験がカギとなっています。それぞれの『選択』は真逆…フレイヤは世界を均等に見た時に最も”正しい”と思われる選択肢を瞬時に選び、一方でフィオは自らの”正義”に反しない道を選んだ。
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広義での正しさと狭義での正義。てんでバラバラで両極端なこの2人が世界を救う鍵を握っているのです。普段はふざけてばかりの九ノ島さんに翻弄されながらも、2人は次第に3課の仕事を理解していくようです。互いにない発想をしあうからこそ衝突もあれば、新しい道も見つけられていく。かなりのデコボコトリオですがそんな珍道中が楽しくもたのもしい。


チャンピオンでは特に鬼門とされるファンタジー世界に「お仕事」というメイン要素を加えたことで新鮮な世界観を成り立たせた作品といった印象です。ユグドラシルの謎や九ノ島さんの過去などはこの後どんどん描かれていって、益々楽しく連載分も追わせていただいています!
あとは女の子がメチャクチャ可愛いという点と、一定需要が世界に存在する(はずの)イケメンエロメガネ九ノ島さんの存在も…知ってほしい…!!
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普段はふざけているけどキメるところはキメる少年漫画の主人公、ってやっぱり私は大好きです!!