発売からだいぶ時間が経ってしまいましたが『まじもじるるも 放課後の魔法中学生』第6巻の感想です。今回の表紙はモモカちゃんとベニーことJJ!スラガさん初表紙はまたもおあずけとなってしまいましたが…でも、今回の表紙がモモカちゃんで、そしてこんなにもしあわせが溢れる絵となっていることには大きな意味があると思います(理由は後述)。


記憶を失くしたJJが宿る「言ノ葉の書」の持ち主となったモモカでしたが、恨みごとに魔法を使ったために魔力に飲み込まれ、魔界の処分対象である『魔獣化』の段階まで進みつつありました。人としての意識を失いつつあるモモカの中に蘇るのは母を亡くし忙しい父親には話を聞いて貰えず、学校ではイジメを受けていた孤独な頃に目の前に現れたたったひとりの友達”ベニー”との温かな記憶。そしてモモカの近くには魔界管理局から送り込まれた魔獣処分の審判を下す”魔界の眼”が…!誰もが終わりを覚悟したその時、モモカを助けるための作戦を発動させたのはルシカでした。
いつもはオトボケで任務もやる気がない感じなのに、咄嗟の機転と察しの良さが凄いんですよねえこの子は…。スラガは身体能力が優れ作戦の遂行能力が高く、モモヒメは知的で冷静に周囲の状況を判断することができる上、薬を作るような能力もズバ抜けている。そしてルシカはとにかく感覚的な部分が優れている。誰も思いつかないようなことを発想することができ、隠した他人の感情を察するようなことに関しては感受性が実に豊かなんですよね。落ちこぼれ魔女として任務を請け負った最下級魔女トリオはそれぞれ「足りない部分」というものもしっかり描かれてはいるのですが、それぞれの長所も丁寧に描かれていて、なおかつどこかで誰かがそれに気付くという描写も丁寧。渡辺先生の作品はこういうどこかはみ出した存在に対してやさしい、というところは共通していると思いますがこの『放課後の魔法中学生』シリーズは特にそういった意味でハッキリとした作品になっていると思います。


そのように「どこかはみ出した存在」であったのは孤独な少女・モモカにも言えることで。本来この時間に居てはならない存在であるルシカ一行が自分たちの時間に戻る前、ハルリリの魔法によってモモカの記憶は消去されることとなるのですが…記憶を取り戻したJJが”ベニー”として過ごした時間をかけがえのないものとして胸に抱き続けること、つらい別れを乗り越えたJJにルシカがそっと寄り添うこと…そのお別れの時間が描かれた場面はせつないけれど温かく、やさしいです。
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そして作中では回想シーンで少し触れられただけのモモカとベニーの楽しかった記憶が描かれたのが今回の表紙なんです。この第6巻の中で、その一瞬を切り取って表紙に描いてくれたことがとても嬉しくて、読み返してからふたたび表紙を見ていると涙が出てきます。現代編に戻ってから成長したモモカちゃんが再登場してくれたらいいな。『魔界編』を読んでいると意外と記憶消去魔法ってふとしたきっかけで切れちゃう気がしますしね!


長かった過去編はこうして終了したわけですが、チロの視点から描かれた「チロと魔法中学生」を読むとこの『魔法中学生』編スタート当時からチロがずっとルシカたちと喋らなかったのは「こういうことだったのか!」と思える真相が描かれています。渡辺先生の作品はどっちかっていうと勢い型というか、(悪い意味では決してなく)あまり後のことを考えずに描かれている印象があるのですが…ときどきこういうふうにずっと仕込み続けてきたのか!?とビックリさせられることもあるのですよね…。過去編では ルシカたちのことを大いに助けてくれたチロ、現代に戻って来てからのルシカたちとの掛け合いも見たいなーと思います!
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そして舞台が現代に戻ってきて早速田部ちゃん回が来たことに心から感謝しています…!!作中の「普通」の象徴のような存在、田部ちゃん…会いたかった…!!ルシカがいつか魔界に帰る日が来るのだろうと思うといまからちょっぴり切なく苦しいのですが、共に「いま」を過ごすふたりの友情をまた見守れる日がやってきたことが感慨深いです、ホントに…。(現代に戻ってきたらこの『魔法中学生』も終わってしまうのではないかと少し心配していたので…)
無印『まじもじるるも』が始まったのが2007年だったので、気が付けばこの『るるも』シリーズももう10周年なんですね…!テレビアニメからも気づけばもう3年なんですよね…なんというか、今後も長く続いていろんなお話を読ませてほしいなあ…と願ってやみません。


…ってところで気が付いたらアマゾンでいまテレビアニメ『まじもじるるも』の1巻が800円で投げ売りされていたので、泣きました。心で泣きました…いいアニメなんですよ…ホント…。