長期となった『侵略!イカ娘』の連載を終えた安部真弘先生の新作『あつまれ!ふしぎ研究部』の1巻が発売されました。『イカ娘』からの新境地でもあって地続きでもある女の子カワイイ系コメディです。
周囲が次々と部活動を決めていく中、これといってやりたい事もなく入部する部を決めかねていた南湘高校1年生・五領大祐。放課後に倉庫に荷物を運ぶ用事を言いつけられたものの向かった先の古い倉庫はもはや倉庫としては使われておらず、”ふしぎ研究部”と名乗る怪しい部の部室になっていた…。
一見、何が行われているかさっぱりわからない「ふしぎ研究部」の実態は、それぞれ正式な部としては部員を集められなかったオカルト研究担当・二宮鈴(一年)、マジック研究担当・神田千晶(二年)、催眠術研究担当・大原ことね(三年)の3人によるいわば寄せ集めの部活。それでもあと1人部員を加入させなければ今週中に廃部…というタイミングで飛んで火に入る夏の虫のごとく現れた大祐を半ば強制的に入部させてしまったのでした。さまざまな「ふしぎ」の研究に余念がない3人と実験体(!?)・大祐のドタバタな毎日…がメインの内容です。
どこまで本物かわからない怪しいオカルトグッズを大量に所持する鈴、「タネも仕掛けもない」を鵜呑みにしてパワープレーでマジックを実行しようとする千晶先輩はともかく、ことね先輩の催眠術の実力はホンモノ。その上平々凡々でお人よしな大祐はとりわけ催眠術が良く効く…というわけで「効きすぎ」がゆえにハプニングも起こりがち。


そのハプニングというのがまたクセモノで、なんやかんやしているうちにことね先輩の豊かすぎるおっぱいに顔面ダイブしたりとかしちゃうわけです。こういう「ちょっとエッチ」な要素があるっていうのが『イカ娘』からのいちばん大きな違いだと思われます。『イカ娘』作中でもコスチュームとかアングルとか、フェチ的な要素というものは散りばめられてはいたのですが…やはり今回は「主人公が男子」というのが大きいですよね。それでもどこか爽やかというか…個人的にはこの場面での「許してしまうことね先輩」「感謝を要求する千晶先輩」とその後の「我関せずな鈴」の流れが大好きで。適度に健康で適度に紳士な大祐と、ある程度のレベルまではおおらかに流せるふし研メンバー3人という構図のバランスがこの作品をちょっぴりエッチでありながらも常に「安心して見ていられる」レベルで保たせています(ふし研の天敵?として登場する風紀委員の高浜さんが極度の妄想癖で過剰反応するのがそれと相反しているのもおもしろいところ)。
あとお色気要素が解禁されたといっても、毎回毎回そういうシーンがあるわけじゃなくて。安部先生の長年の『イカ娘』の連載で培われたテクニックによって描かれる、個性的な面々のキャラクターを潰しあわないで8ページにほどよく落とし込むコメディの読み応え。あくまで基本がしっかりしている中でのお色気要素のありがたみ…みたいなところがあります。あくまで個人的な感覚ではありますが、エッチな場面があるとやっぱり嬉しいですけどなかったらなかったでガッカリもしない、その分千晶ちゃん先輩アホかわいいとか別の要素で楽しませてくれるから…っていう感じです。この安定感はデカい。
甲乙つけがたい女の子キャラの中でも個人的にはどう見てもマジック向きじゃないマジック研究担当の千晶先輩がとくにお気に入りです。かわいい。そしてとりたてて特徴があるわけでもない凡庸な主人公に見える大祐が時によい具合のツッコミやいい反応を見せてくれて、笑いの面で効いている点も好きですね…。


突然の雨、一本しかない傘を前に「誰が傘を使うか」決める際こっくりさんを提案するオカルト好きの鈴に「こんなことにこっくりさんを巻き込むんじゃない」とどっちかというとこっくりさん側を気遣うコメントをしちゃうのとか、大祐の心根の良さが滲み出ててたいへん好きな場面です。まわりの個性を消さず、かといってその中でも自身の存在感は消えない。バランスの良い主人公です。
初連載の『イカ娘』が長期連載となったことで安部先生も新連載開始時のプレッシャーは相当なものだったのではないかと思われますが、まったく同じようではなく、かといってファンを裏切らない新作になっていると思います。サクサク読めるけど1冊まとめて読むと高密度8ページコメディの読み応えはかなりのものでした。新キャラも続々で、今後の展開もとてもたのしみ!