週チャン2025年夏の新連載攻勢でひとつ、(チャンピオン誌上では)聞き覚えがなかった作家さんの新連載が告知されました。それが浦野ウララ先生の『ガーリーデビュー』です。しかし蓋を開けてみればこれがとんでもないダークホースというか…とにかく気になってしまう作品でした。単行本1巻の発売、まことにおめでとうございます。
主人公「篝アルク」…親友の北野くんからは「ガーリー」というあだ名で呼ばれる彼は、ある日父親から譲り受けた旧い恋愛ゲームにハマったことで恋愛への憧れを強め彼女を作ると決意したものの、女子とは会話することもままならない日影の中学生時代を送っていました。
高校進学を機に今度こそ彼女を作ると息巻くものの、男子高から共学に変わったばかりだという進学先の高校にはなんと女子生徒の入学はたったの1人だとわかり前途多難。しかし唯一の女子と出逢って恋愛するという野望を捨てきれず、気合を入れて登校した高校入学初日。登校してきたクラスメイトたちは、彼以外の全員が「女子の制服」を着ていました……。
女子は1人、しかし女子の制服を着た生徒は自分(篝)以外の全員。つまりたった1人の女子以外のクラスメイトは「女装した男子」であるという衝撃の幕開け。そこには幼い頃からずっと一緒に過ごしていた北野くんも含まれていて…!
それぞれのキャラデザも凝っていますが、全員が首元(喉仏)を隠すチョーカーや襟などを身に付けているところにも作り手の”本気度”が現れているように感じます。
物語序盤の篝くんは「彼女を作りたい」「恋愛したい」という理想(だけ)がから回っていて、正直大事なものを見落としている印象があります。しかし(北野くんの存在もあって)すぐにその過ちに気が付くのですね。ここはわたしが非常に彼が「チャンピオン主人公っぽいな」と感じた部分でして…。
あくまでわたしが読んできた中ではありますが、たとえば『弱虫ペダル』の小野田坂道であったり、『六道の悪女たち』の六道桃助であったり、『ヤンキーJKクズハナちゃん』の早乙女穂高といった主人公たちは初めから強く、正しくあったわけではなかった。むしろ僻み嫉みや自分を正当化するような言い訳をしていた頃だってあった。けれど、その後は成長を見せてくれるわけですよね。どこかで間違っても、時には仲間に助けられながら考えや行動を改めていける強さを持っている。この『ガーリーデビュー』の篝アルクくんもそんな主人公像に近い印象です。イコール「チャンピオンらしい」とはまた違うかもしれませんが、自分が好きな作品群を彷彿とさせる部分でもあるので嬉しい要素のひとつです。
また、クラスメイトが(1人除いて)男の娘…と設定にはインパクトもありますし、キャラデザもキャッチーではありますが「ただ女子の制服を着たいから着る」と言えるほど風通しがいいとは言えない世界の中、一人一人に相応の覚悟と努力が備わっているという部分が実はこの作品の肝なのではないかと感じます。
上記のとおり、まだまだ未熟な篝少年がはじめに向き合うことになるのが”親友”北野くんの覚悟。ずっと隣に居たはずなのに見抜けなかった心に触れたことで篝少年はまたひとつ成長します。(まだ彼に見えていない北野くんの心の奥の奥があることはまた別として…)
このような覚悟や事情がひとりずつ…クラスメイト15人に備わっていて(1人は女の子だとしても他が全員男子の学校に入学してくるにあたって覚悟も何もないわけがない)、今後ひとりひとり深掘りされていくのかと思うと楽しみでドキドキどころかゾクゾクします。少し話が進んだところで第一話を読み返すと新たな発見があったりもして、序盤から各人にしっかりとした人間性が付与されていることが感じられます。クラスひとつぶんのキャラクターが、はじめから物語のための装置ではなくそれぞれの人生を生きてきた(生きている)人物として描かれているところに相当な気概を感じます。いち読者の立場としてではありますが、全員分の物語が描き切られるまで連載が続くことを今から祈らずにはいられません。
個人的に惜しいと思うのは…1巻の収録があと1話多ければ、という点。ぜったいにこの次の回まで読んだ方が初見読者さんにも魅力が伝わりやすいと思うのに…!その後も、1巻収録分以降にもっともっと良さを感じる要素があるのでまずは世間にちゃんと見つかってほしいな~と思います。
今後の物語も、クラスメイト一人一人の深掘りも、それから篝くんが結ばれるのは運命の「女の子」なのか、それとも…というところも、ますます楽しみです。
